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ロイテリ菌って、本当にお口にいいの?口腔環境を整える
ロイテリ菌って、本当にお口にいいの?
「悪い菌を倒す」から「菌の環境を整える」へ
「ロイテリ菌って聞いたことがありますか?」
最近では、テレビやインターネット、ドラッグストアなどでも「ロイテリ菌」という名前を見かけることが増えてきました。
「乳酸菌だから、腸にいい菌なのかな?」
そう思われる方も多いかもしれません。
実はロイテリ菌は、腸内環境だけではなく、お口の中の環境についても研究されている乳酸菌です。
今回は、これまでにも何度かご紹介してきたロイテリ菌について、もう一歩踏み込んで、
「そもそも、なぜ歯科医院でロイテリ菌を扱っているの?」
というところからお話ししたいと思います。
そもそも「ロイテリ菌」って何?
ロイテリ菌は、正式には
Limosilactobacillus reuteri
という乳酸菌の一種です。
以前は「Lactobacillus reuteri」と呼ばれていたため、研究論文や商品によっては「L. reuteri」と書かれていることもあります。
乳酸菌と聞くと、ヨーグルトなどを思い浮かべる方が多いと思います。
乳酸菌にはたくさんの種類があり、それぞれ性質が違います。
その中でもロイテリ菌は、腸内環境だけでなく、口腔内の細菌環境との関係についても研究が蓄積している乳酸菌の一つです。
特に、歯肉の炎症、歯周病関連細菌、プラークやバイオフィルム、口腔内の微生物環境などについて研究されています。
「乳酸菌なら、どれも同じ」ではありません
ここは、ロイテリ菌を知るうえでとても大切なポイントです。
「乳酸菌」と一言で言っても、すべて同じ働きをするわけではありません。
例えば、同じ「犬」でも、柴犬、トイプードル、ゴールデンレトリバーなど、それぞれ特徴が違いますよね。
菌も同じです。
ロイテリ菌という「菌種」の中にも、さらに「菌株」という細かな違いがあります。
そして菌株によって、
・どこから分離された菌なのか
・どのような環境に適応するのか
・どのような物質を作るのか
・他の細菌にどのような影響を与えるのか
・どのような研究が行われているのか
などが異なります。
つまり、
「ロイテリ菌が入っている」だけでは、実は十分な情報ではありません。
「どのロイテリ菌なのか?」を見ることが大切なのです。
口腔内で特に研究されているロイテリ菌
口腔領域で特に研究されている菌株として知られているのが、
L. reuteri DSM 17938
と
L. reuteri ATCC PTA 5289
です。
この2つの菌株を組み合わせたプロバイオティクス製品・研究も多く、
「口腔内の環境を整える」という視点から研究されています。
特にATCC PTA 5289は、口腔由来の菌株として研究されている点も特徴の一つです。
つまり、同じ「乳酸菌」でも、
「腸の環境だけを考えている乳酸菌」と「口腔内での働きについて研究されている乳酸菌」では、見方が変わってくる
ということです。
では、ロイテリ菌は何をしてくれるのでしょう?
ここで注意したいのが、
「ロイテリ菌を摂れば、むし歯や歯周病にならなくなる」
という話ではないということです。
ロイテリ菌は、薬のように病気を直接治すものではありません。
歯磨きの代わりにもなりません。
歯科医院での治療や定期管理の代わりになるものでもありません。
では、何のために使うのでしょうか?
それは、
「口腔内の環境をより良い状態に保つための一つの選択肢」
として考えることができます。
研究では、歯肉の炎症や出血、歯周病関連細菌、口腔内の細菌叢などへの影響が検討されています。
つまり、
「悪い菌を全部なくす」
という考え方ではなく、
「口の中にいるさまざまな菌とのバランスを考える」
という発想です。
これから大切になる「菌のバランス」という考え方
これまで私たちは、細菌というと、
「悪い菌」
「病気を起こす菌」
「退治しなければいけないもの」
というイメージを持ちがちでした。
もちろん、感染症などでは病原菌を適切に治療することが大切です。
しかし、私たちの身体にいる菌をすべて「悪い菌」と考えることはできません。
私たちの口の中にも、腸の中にも、たくさんの微生物が暮らしています。
そして、それらの微生物と私たちの身体が関係しながら、一つの環境をつくっています。
だからこそ、これからの健康を考えるときには、
「悪い菌を倒す」だけではなく、
「菌が暮らす環境そのものを整える」
という視点が大切になってきます。
口の中にも「菌の生態系」がある
私たちの口の中には、非常に多くの種類の微生物が存在しています。
健康な状態では、さまざまな微生物が存在しながら、一定のバランスが保たれています。
ところが、
・歯磨きが十分にできない
・甘いもの(砂糖)を頻繁に摂る
・唾液が少ない
・睡眠不足
・ストレス
・喫煙習慣
・食生活の乱れ
・歯周病による炎症
など、さまざまな要因が重なると、そのバランスが崩れることがあります。
体内の細菌のバランスが崩れることを「ディスバイオーシス」と呼びます。
ここで大切なのは、
「悪い菌がいるから悪い」
だけではなく、
「なぜ、その菌が増えやすい環境になっているのか?」
と考えることです。
「歯磨きを頑張っているのに、なぜ?」
患者さんから、
「毎日ちゃんと歯を磨いているのに、むし歯になります」
「歯磨きしているのに、歯ぐきから血が出ます」
という相談を受けることがあります。
もちろん歯磨きはとても大切です。
でも、口腔環境は歯ブラシだけで決まるものではありません。
唾液、食生活、睡眠、舌、呼吸、姿勢、咀嚼、飲み込み、生活習慣など、さまざまな要素が関係しています。
だから私たちは、
「もっとしっかり磨きましょう」
だけではなく、
「お口の中の環境そのものを見てみましょう」
と考えています。
そして「口」は「腸」につながっています
ここから、さらに大切な話があります。
それは、
「口腔環境と腸内環境は、無関係ではない」
ということです。
口と腸は別々の場所に見えますが、口から食道、胃、腸へと一本の消化管でつながっています。
私たちは毎日、食べ物だけでなく、唾液と一緒にたくさんの口腔内細菌も飲み込んでいます。
もちろん、胃酸などによって多くの菌は影響を受けます。
しかし近年では、
口腔内の細菌環境と腸内細菌環境、さらに全身との関係
が研究されるようになっています。
これを「口腔―腸内細菌叢(oral-gut axis)」という視点で捉える研究もあります。
つまり、
「口の中だけを見ればいい」
という時代から、
「口から腸、そして全身までつながっている」
という視点へ。
少しずつ健康の考え方も変わってきているのです。
腸内環境も「菌を全部なくす」わけではありません
腸内環境について考えてみると、分かりやすいかもしれません。
腸の中にも、たくさんの細菌が暮らしています。
「悪い菌を全部殺してしまえば健康になる」
とは考えませんよね。
大切なのは、さまざまな菌が存在する中で、全体として良い環境をつくること。
これは口の中にも共通しています。
だから、
腸内環境を整える。
そして、
口腔環境も整える。
この2つを別々に考えるのではなく、身体全体の環境として考えていくことが大切なのです。
ロイテリ菌は「菌を足せば終わり」ではありません
ここで、もう一度ロイテリ菌に戻ります。
ロイテリ菌を摂れば、それだけで口腔環境や腸内環境がすべて良くなるわけではありません。
大切なのは、
「ロイテリ菌を摂ること」そのものではなく、
「自分の口腔環境を整える」という意識を持つこと。
そのための一つの選択肢として、ロイテリ菌があります。
歯磨き、歯間ケア、フッ化物、食生活、唾液、睡眠、舌、呼吸、咀嚼、定期的な歯科管理。
その土台があったうえで、
「菌の環境にも目を向けてみる」
という考え方です。
だから、歯科医院でもロイテリ菌を扱っています
「ロイテリ菌って腸内環境のためじゃないの?」
と思われるかもしれません。
確かに腸内環境との関係も研究されています。
しかしロイテリ菌には、口腔内の細菌環境との関係についても研究があります。
そのため、口腔環境を整えることを大切にしている歯科医院でも、選択肢の一つとして取り扱われています。
川田デンタルクリニックでも、ロイテリ菌を単なる「健康食品」や「歯周病を治すもの」としておすすめしているわけではありません。
私たちが大切にしているのは、
「歯を治す」から「口腔環境を整える」へ。
という考え方です。
ロイテリ菌は、その考え方を実践するための一つの選択肢なのです。
「何を摂るか」より、「どう整えるか」
ここまで読んでいただくと、
「じゃあ、ロイテリ菌を摂ったほうがいいの?」
と思われるかもしれません。
でも、私たちがお伝えしたいのは、
「ロイテリ菌を摂りましょう」
ということだけではありません。
むしろ、
「自分の口腔環境について、一度考えてみませんか?」
ということです。
歯磨きはできていますか?
歯間ケアはどうでしょう?
唾液は十分に出ていますか?
食事の回数や内容はどうでしょう?
よく噛めていますか?
舌はきちんと動いていますか?
鼻で呼吸できていますか?
睡眠は足りていますか?
そして、定期的に歯科医院でお口の状態を確認していますか?
こうした一つひとつが、口腔環境をつくっています。
「歯」だけではなく、「口腔環境」を見る
私たちは、これからの予防歯科では、
「歯を磨く」だけではなく、
「口腔環境を整える」
という考え方がますます重要になると考えています。
歯だけを見るのではありません。
歯ぐき、舌、唾液、細菌、呼吸、咀嚼、飲み込み、食生活、睡眠。
そして、その先にある腸内環境や全身の健康。
すべてが完全に一つの原因でつながっているわけではありませんが、身体はそれぞれが独立して存在しているわけでもありません。
口腔環境を整えることは、人生を整えること
口は、身体の入り口です。
毎日の食事も、呼吸も、人との会話も、笑顔も、口から始まります。
だからこそ私たちは、
「歯を守る」だけではなく、
「口腔環境を整える」。
そしてその先に、
「全身の健康を考える」。
さらにその先に、
「その人の人生を考える」。
そんな歯科医療を目指しています。
ロイテリ菌も、その中の一つの選択肢です。
万能なものではありません。
すべての人に必要なものでもありません。
けれど、
「悪い菌を倒す」から「菌と共存しながら環境を整える」へ。
そんな新しい予防の考え方を知るきっかけにはなるのではないでしょうか。
お口の中の環境を整える。
その先には、腸内環境があり、全身の健康があり、そして毎日の生活があります。
私たちは、歯だけを見ているのではありません。
「人生を整える」
その入り口の一つとして、
「口腔環境を整える」
ことを大切にしています。
川田デンタルクリニックは、これからも皆さまのお口の健康を、生涯を通じて
人生の一時期ではなく、赤ちゃんから高齢まで常にかかりつけという立場で
「点ではなく線」で支えていきたいと考えています。
この記事の監修・執筆
川田 隆央(かわだ たかお)
歯科医師/川田デンタルクリニック院長(3代目)
世田谷区・上野毛で3代続く歯科医院の院長として、「歯を残すための予防歯科」を軸に診療しています。
専門分野:子どもの口腔機能の発達と小児矯正/口腔筋機能療法(MFT)/歯の予防
小学校校医、幼稚園園医、保育園園医(歯科)
所属:日本小児口腔発達学会(口腔機能支援士)、日本口育協会(口育士)、日本睡眠歯科学会、日本老年歯科医学会、嚥下トレーニング協会
川田デンタルクリニック
〒158-0093 東京都世田谷区上野毛1-25-10(東急大井町線「上野毛駅」徒歩1分)
TEL:03-3701-0550
診療時間:平日 9:30〜12:00/14:30〜18:00、土曜 9:00〜12:00/14:00〜16:00
休診日:木曜・日曜・祝日 (月曜午前のみ来院制)
この記事は2026年時点の一般的な情報です。お口の状態には個人差があり、記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。気になる症状がある場合は、歯科医院でご相談ください。
お口のことで気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
ご予約・ご相談:03-3701-0550
